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今回は「第四十七回短歌研究新人賞」予選通過作(二首掲載)です。
 
 僅かでも想い起こせば泣く心仕舞えば悲し夏の夕暮れ
 
 飛び立ちて影も無きかな木犀にぬくもり残す夫婦鶯
 
 軽やかな肌を滑らす風さやか陽射しはあをし初夏衣替え
 
 あをあをと繁る若葉は我覆いしばし眺むる細き春雨
 
 夢恋ひて目蓋を閉じし午前五時我をいざなへ空の雀よ
 
 風鈴が君の声だと聞こゆ時佇む影に何を語らむ
 
 延々と続く読経の只中にふと懐かしき祖母の影見ゆ
 
 抱き締めて今も残るは君の声あれは五月の学校帰り
 
 制服を脱いだ君を見られない胸を合わせて重ねる鼓動
 
 雨は降る声も上げずに刺すやうに目を伏せ見上ぐこの雨が降る
 
∇  ∇∇
 
 静かなる朝からの雨受け止めて誇らしげなり紅き紫陽花
 
 尾を振って抱き着く愛犬髭白し見つけて想うこの十年を
 
 さばかりとふざけて逃げる柔肌に舌重ね寄るつきぬ思いに
 
 夕立ちに打たれて歩く初七日は流す流さじ涙あらずや
 
 砂洗う波に埋まりし君の足初めての海陽射し遥かに
 
 学舎に子らの声なし夕暮れに向日葵叩く夕立ちの声
 
 砂浜に寄せては返す春の海風に吹かれし君の柔肌
 
 草むらで眺むる空は雨上がりつなぎし指のスカアト二つ
 
 空はるか今かと待つは夏の息しばしとどめよ青葉の時を
 
 霧雨に打たれて歩む春の夜にわずかにひかる葉桜の群れ
 
∇∇  ∇
 
 十月過ぎ満面のしわ対面す切り裂く声に我に返らむ
 
 父としていかばかりかを考えるわずか十日の君を見ながら
 
 手を伸ばし抱く幼子は重かりしあゆみ進めよひととせの夜
 
 心憂し涙誘ふはひぐらしの夕闇迫る風鈴のかげ
 
 蛍舞ひいざなへ我を山道へ読経幽かに十六夜の月
 
 春風を吹きし神にぞ奉らむ山の端染める桜散るまじ
 
 動く身の先行く心春風にあなや離れじ桜見初めて
 
 打ち水の上がる湯気すら触れもせで飛ぶ塩辛は真直ぐに往く
 
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